たまには真面目な日記を
日本舞踊藤間流家元としての仕事は、人前で踊りを踊ったり、人に踊りを教えたり稽古したりするだけではない
日本舞踊協会の理事であったり、デスクワークであったり
また、流派内の大きな所では名取式だったり、師範試験と云う物だったりも有る
簡単に言えば名取式とは
本名で日本舞踊を稽古していた人が、いよいよ藤間の名前を取って正式に日本舞踊家となるに当たって、その日本舞踊家としての名前と家元藤間流の紋の焼印が入った名札及び、家元藤間流の名取であるとの証明の免状等を授与する重い式
家元である僕は取立の先生方の立ち会いの下、新名取の人に一人ずつその品々を渡し、固めの盃を交わし、記念写真を皆さんで撮ったりする訳だ
そして、師範試験とは
その名取となった御弟子さんが更に稽古を重ねて、取立の先生が「いざ、良し」とOKを出したらば、課題である三曲の踊りを踊って貰って
師範、つまりは踊りを教える側の先生の資格を取れるかどうかを審査する、と云う物
この時、審査する側は受験者の踊りの腕前を見るのは勿論だが、それよりも何よりも「試験に臨む真摯さや気持ち、行儀を第一に見ろ」と、高弟の先生方にきつく言われたのを今でも覚えている
審査をする際にそれを忘れた事は無い
新名取の人も師範試験の受験者も一生に一度有るか無いかの気持ちで来ている訳で
そう云う人達に免状を渡したり審査をするのは、生半可な気持ちでは出来ないので
身体は使わなくとも、こちら側も実は物凄く真剣な神経を使う仕事ではある
その分、名取になって喜んでくれていたり、試験に合格した人を見るのは嬉しい限りだけどね
この二つは大体一年の内でもこの時期、三月か四月に、当然一日ずつでは終わらないので、複数日を取って行われる
今年もやった
正直、新型コロナウィルスの影響で、やるべきか中止すべきかも議題にはなったのだけれども
「やって欲しい」と云う要望が強かった為
「今年は取り止めたい」と言う人達には勿論、強制はせずに各々の希望に任せて、来たい人にのみ来て貰う、来れない人には今年に限り諸々の品を郵送すると云う形で
万全の対策、ケアの下で式自体のコンパクト化を図る等して行った
正直、僕は何でもかんでも自粛をすればただ済むのだとは思っていない
それぞれの良識、そして納得の意見が合致した場合はその望みに応じるのも必要と思っている
求めてくれる人が居たらね
健康や予防が先ずは第一だと云う意見には勿論異存無いが
全てを権柄ずくで雁字搦めにすればいい訳では無い
それこそモラルハラスメントに通じて来てしまう恐れが出るのではないだろうか
話はずれたが今年も名取式が無事に終わり、師範試験の合格者が多数出た事は実に喜ばしいし、これも先々代、先代の家元及び先達の高弟方の遺徳の御陰だと心から感謝している
これ等の儀式もまた、踊りの振りとは別に家元藤間流の次代に繋げて行かなければならない遺産の一つだと考えて毎回勤めている