尾上松緑、藤間勘右衞門の日記

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2019.04.01 Monday

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さて、今年五月からの新しい元号が令和に決まった今日
こちらは名古屋に於いて、御園座陽春花形歌舞伎、通し狂言「南総里見八犬伝」の初日が開いた
去年十月以来の名古屋
前回は「もしや」とは、思っていたが
「まさか、半年の間には改善されるだろう」と、静観していた問題が全く進歩しておらず
初日にして、懸念は現実となり、今の劇場運営方の地力と限界
そして、緩さを或る意味、痛感させられているけれど
何と言っても、去年、生まれ変わったばかりのまだ赤ん坊
先ずは劇場の成長を見守る時期、私情は横に置いて、そうしたい

ただ、見守る時期も、そうは長くは取れない

この甘っ垂れた状態をそのまま続けるのであれば、御園座は、遅かれ早かれ消滅するだろう

今の会長、社長を始めとした経営陣よりは、前の社長を頭とした体勢だった時の方が、まだ、遥かに真剣だったし、覇気と熱意が有った感触だ

どうして、こんな体質になってしまったのだろう

我々、舞台サイドは、いい作品を作ろうと、命を削って舞台に臨んでいる

運営サイドも、手に手を取って、同じ方向に向かってくれる様に、目が覚めてくれる事を切に切に願って止まない
その我々、舞台サイドの方は座頭、中村芝翫の兄さんをトップに、中村松江さん、中村梅枝さん、中村梅花さん、片岡愛之助さん、市村橘太郎さん、坂東新悟さん、坂東彦三郎さん、坂東亀蔵さん兄弟と
他にもディスカッション多く、いい雰囲気で稽古が進んで初日を迎えた
その方向で一日、一日と皆で成長しながら千穐楽に向かって行きたいと考えている
時に、僕が演じている役は犬飼現八信道
二度目だ
僕は里見の八犬士の中でも現八が随一に好き
ぶっちゃけると、一生、他の八犬士は演らなくてもいいと思っている位
「現八」と言って一番に思い出すのは、十二代目市川團十郎の叔父の現八だ
花道から駆け出て来た時の錦絵の様な美しさ
荒ぶる男らしさと匂い立つ様な色っぽさ
本来ならば、一つの中に同時に存在出来る筈の無い、相反する物の同居
あれこそ、曲亭馬琴が表現したかった現八その物なんじゃないか
自分を含め、あれに上超す現八を目の当たりにせずに、僕は死を迎える事だろう
それでいい
それ位、ただひたすら、格好良かった
荒事等も素敵だったけれど、十二代目團十郎の叔父と云うと「慶安太平記」の丸橋忠弥、「三人吉三巴白浪」のお坊吉三
そして、この「南総里見八犬伝」の現八
僕は、そう云った役が一番最初に頭に浮かんで来る
前回、演じた時にも書いたかも知れないけれど、今回も成田屋の叔父の足元に一歩でも近付ける様に毎日を大事に演じる
また、現八は僕の中では「三國志」の張飛益徳に近いイメージを持っている
いや、厳密に言えば“もう少し思慮深い張飛”と云った所か
だから、自分で持っているそう云うニュアンスを少しだけ、役の中にスパイス出来れば大成功なんだがな
最後になった
今月からまた、我が一門に新しい家族となる弟子が入った
本名から一文字を残して、尾上貴緑の芸名とした
まだ、十七歳の少年
当たり前だが、僕の息子の方が全然、年が近い
きっと、一生懸命に修行をする事だろう
いずれも様には何卒、末長い御贔屓をお願い申し上げたい


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